チャイ・ブレイクの本棚
*異国の土地でふっと心の安らぎを得られるのは日本語の書籍を手にするひと時。どんなに忙しくても読書は暮らしの基本です。
愛犬の悩みが解消する 魔法のなで方
犬のホリスティックケアに興味のある人ならば既に聞いたことがあるはずの「Tタッチ」に関するとっても素敵で理想的な1冊です!

もともとはアメリカで馬のトレーニングの指導にあたっていたリンダ・テリントン・ジョーンズが始めたボディーワークが「Tタッチ」で、マッサージのように筋肉に働きかけるワークとは異なり、皮膚を非習慣的に刺激することで、身体に対する気付きを促し、細胞を活発化し、心の安定を図るというテクニックです。

日本でこのTタッチの第一人者である松江香子さんが著された本書は、難解な理屈は抜きに、可愛いワンちゃん達の写真をふんだんに使って、各タッチについてわかりやすく手引きがなされています。

それに本当に親切だな〜と感じるのが表現が非常に具体的なこと。

例えば力加減については「弱く」とか「そっと」とかいう表現ではなく「まぶたの皮膚を動かす程度」と書かれていますし、マッサージについての原寸サイズの練習帳のページもあります。きっとこれまでのセミナーでの説明のノウハウが活かされたものとなっているのでしょう。

セミナーを受けられず、この本だけで学ぼうとしている人にとって有難い表現が随所にちりばめられています!

また章立ても非常に具体的で、各タッチからどのような具体的な効果が期待できるのかが懇切丁寧に説明されています。

愛犬の問題行動をいかに解決するのかといったテーマを「人間側からの都合」としてではなく「愛犬がより心地よく居るために」という観点から捉えていることが伝わってきて、読者の心までも温かくなる本です。

最後にはTタッチ以外のホリスティックケア(ドッグマッサージ、ハーブ、バッチフラワーレメディ)の紹介もあって、これだけ充実した内容で1500円というのは非常にお得です。

愛犬家に贈ると間違いなく喜ばれる1冊だと確信します。

愛犬の悩みが解消する魔法のなで方—Tタッチ愛犬の悩みが解消する魔法のなで方—Tタッチ
松江 香子

主婦と生活社 2006-07
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テーマ:紹介したい本 - ジャンル:本・雑誌

武田久美子という生き方〜きれいでいるには理由がある〜
美は一日にして成らず。

まさにそのことを体現しているのが武田久美子さんですね。

ちびっ子モデル〜時代のアイドル〜グラビアクイーン〜セクシー女優...と年齢と時代の流れに応じて自らのあり方を変えながら、今はこうして一線を退いてアメリカで優しい旦那様と可愛いソフィアちゃんと3人で幸せに暮らしている...。

シャンパンの泡のように儚く消えていく芸能人が星の数ほど居る中で、演技がずば抜けて上手なわけでもなく、歌が上手なわけでもなく(本書で御本人もハッキリ下手だと書いておられます)、何か特技があるわけでもなく、美しさが他の芸能人よりも格別に勝っているというわけではなく、そういう武器と呼べるものが無い状態にありながら、この人はなんと上手にここまで渡ってきたのか...と考えると、ひとえに「意志の強さ」と「自分の望みを具体的に描く能力」だと思います。

この本の中には武田久美子さんの美の秘訣が沢山詰まっているのですが、決して「芸能人だから出来たことでしょ!」というようなハードルの高い方法ではなく、誰にでもその気になればスグに真似出来ることが沢山紹介されています。

ただ、皆が武田久美子になれないのは、継続が出来ないから。そしてうわべだけを取り繕おうとするから。そこにやっぱり30代後半で美しさに益々凄みが感じられて来る女性と、どんどんオバサン濃度が濃くなっていく人との違いが生まれるのでしょう。

家族でのスナップも沢山紹介されているのですが、旦那様も優しさを絵に描いたような癒し系の旦那様で、お嬢ちゃんのソフィアちゃんがまたパパそっくりなのも微笑ましい限りです。

普通の会社員の旦那様と結婚して身の丈にあった暮らしを楽しんでいるところもまた魅力だな...と感じました。

女性として元気とヤル気が湧いてくる1冊です。

武田久美子という生き方 きれいでいるには理由がある武田久美子という生き方 きれいでいるには理由がある
武田 久美子

小学館 2004-07-10
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テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

田中宥久子の「肌整形」メイク
かの有名な顔筋マッサージのノウハウを知りたくて購入しました。

見ながらやってみましたけれども、本当に顔立ちがスッキリ!!肌のトーンもひとつ明るくなります!!!!!

・・・という気がするのは自分だけかもしれません。

そもそも普段じっくり丁寧に顔に触れるチャンスがないので、こうして10分でも顔をアレコレいじることで効果が表れるのでしょう。マッサージも流れを覚えると簡単なので、毎朝続けられそうです!

7年前の顔になる」というキャッチフレーズですけれども、私の7年前となると28歳か〜〜。うーん、どうでしょうか。

このマッサージは骨格そのものに働きかけるマッサージなので、従来の「肌を動かさない、ソフトなタッチ」とは違って「イタ気持ちいい」くらいの力をかけるマッサージで、脂肪や老廃物の塊をつぶしてリンパに流し込むといった手法です。

田中宥久子さんが12年の歳月を費やして辿り着いたこの造顔マッサージのノウハウを惜しげもなく紹介しておられるのは読者にとっては有難いことです。日本の女性に美しく若々しく居て欲しい、年を取ることを恐れないで欲しいというメッセージが伝わってくるようです。

何よりもこの造顔マッサージが世間で注目されたのは、自分に顕れる効果以上に田中宥久子さんご自身が還暦を迎えておられるとはとても信じられないシャープなフェイスラインと肌の張りを持っておられるところに、一朝一夕では創れない説得力が宿っているのだと思います。

本書では顔筋マッサージ方法の紹介につづいて、田中宥久子さんが当時クリエーターとして立ち上げておられたコスメブランド、SUQQUの商品コンセプトにも多数のページが割かれています。そして最後に田中宥久子さんの自伝が綴られていて、学生時代〜就職〜結婚〜出産〜育児〜離婚〜現在と一人の女性の生き方が語られています。

この本を手に取った人は、様々な角度から「女性の美」について考えさせられるのではないでしょうか?

買って良かったと思う1冊でした。

7年前の顔になる田中宥久子の「肌整形」メイク [DVD付]7年前の顔になる田中宥久子の「肌整形」メイク [DVD付]
田中 宥久子

講談社 2004-11
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テーマ:紹介したい本 - ジャンル:本・雑誌

どうぶつたちへのレクイエム
「この子の最期を看取るのがいやだから」(42ページ)

「子犬を身ごもったから」と捨てられた母犬は、自らの中に宿った小さな命とともに最期の時を待っていました。(48ページ)

「大きくなりすぎた」
「手におえない」(52ページ)


そのような人間の身勝手で殺処分になろうとする犬や猫の姿を捉えたドキュメンタリーです。

つい先日も徳島で保護された「崖っぷち犬の里親立候補者が相次ぐ中、その選から漏れた人達に同様に里親を探している同種の犬を紹介したところ、全員から断られたという事実...。

保健所での殺処分が決して安楽死ではなく苦しんだ挙句に死んでいくのだということを、この本を通じてより多くの人が知るべきでしょう。

特にこの本は小学生以上ならば読めるように・・・と全ての漢字にルビが振られていますので、感受性豊かな子供達に紹介したい1冊です。

私も今5匹の犬を飼っていますが、いずれも捨てられていたり、貰い手を捜して居る方から引き取ったり...という血統書も何もない犬達です。でも命の価値に違いはありませんし、かけがえの無い犬達です。

動物と暮らす人生の素晴しさは何事にも替え難いものです。

かつて古代インドのアショカ王が国家平定の法勅碑に動物愛護の精神を刻んだように、命あるものを慈しむ精神は国家繁栄の基盤となるものです。日本がこのまま壊れていかないように、動物を慈しむ心を呼び起こしたいものです。

どうぶつたちへのレクイエムどうぶつたちへのレクイエム
児玉 小枝

日本出版社 2005-02
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テーマ:紹介したい本 - ジャンル:本・雑誌

心が変われば 〜山下智茂・松井秀喜を創った男〜
帯にこう書いてあります。

山下監督の言葉は宝石箱です。
今でも僕の心の中で輝き続けています。
                      松井秀喜


ヤンキースで活躍している松井秀喜選手の母校、星陵高校野球部の山下智茂監督との運命の邂逅と軌跡を辿ったドキュメンタリー。

野球に詳しくない私が読んでもグングン惹き込まれる展開でした。

根上中学校野球部・高桑充裕コーチが星陵高校OBであり、山下監督の教え子であった...という所から、既に松井選手の山下監督との出逢いは準備されていたという予感にときめきながら物語が進行します。

山下監督は猛烈に厳しい鬼の監督であるのと同時に、生徒達への並々ならぬ愛情に突き動かされて走り続ける教師であるという姿が浮かび上がります。また血液型別にポジションの向き不向きを分析したり、チームづくりに投票制度を導入したり...と経営マインドを常に持って更に良いチーム形成に試行錯誤を繰り返して来られた方だということもわかります。

そんな山下監督と松井選手との軌跡を辿る間に気付かされるのは、監督は決して「上手な選手を育成すること」を主眼としていたのではなく、「野球を通じて立派な人間を育成すること」を最大の命題としておられたのだということです。

生徒達の目につく所にはこの監督の言葉が掲げられているのだそうです。

心が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる


これはどんな環境に居る人にも共通している真理です。

また本書の章立てもこの言葉に沿って、第一章から第四章まで展開して行くのです。

山下監督は日々の激務の間にも自己啓発を怠らなかった意志の人です。

「自らに読書を課すことも、自己変革の一つでした。古今東西の名著から最新のベストセラーまで、何でも読みあさりました。その中から、いいと思った言葉をメモし、生徒たちによりインパクトを与えるようアレンジして伝えるのです。ですから、原典の言葉はどんどん変わっていきました。」(プロローグ・19ページ)

そして出来上がった監督語録の一部は...。

「得意淡然 失意泰然」
「天才は有限 努力は無限」
「朝は希望に生き 昼は努力に生き 夜は感謝に眠る」
「能力の差は小さい 努力の差は大きい」
「流汗悟道」
「青春とは自己の可能性に挑戦する姿である」


人生において...特に10代のうちに、こうした人格形成を真剣にサポートしてくれる師に恵まれる人が世の中にどれほど居るでしょう?

またそのような師に恵まれても、素直に耳を傾け、行動を沿わせ、自己の眠る才能を開花させることが出来る人がどれほど居るでしょう?

松井秀喜という人の器があって、山下監督の指導者としての才能が開花したとも言えるなぁ〜と感じました。

今、指導者の立場に居る人は、読んでいて共感することばかりのはず。野球に興味の無い人にも全くハンディの無い内容です。

ここまで突っ込んだ取材が出来たのは、著者の松下茂典氏(ノンフィクションライター)もまた星陵高校野球部の出身だったからです。

松井秀喜 選手
山下智茂 監督
松下茂典 著者


な、なんだか、皆さん名前が似ているんですけれども...

心が変われば 山下智茂・松井秀喜を創った男心が変われば 山下智茂・松井秀喜を創った男
山下 智茂 松下 茂典

朝日新聞社出版 2003-09-30
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テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

愛されるサービス ホスピタリティは50:50の関係から生まれる
サービスの神様と呼ばれ、数多くのレストラン運営に携わってきた新川義弘さんの著作。

実践的なアイデアが詰まっていて、スタッフの指導について、マネージャーのあり方について、お客様とのコミュニケーションのコツについて、具体的な事例が豊富に紹介されていたのが大変参考になりました。


1.アンティシペイション(事前予知力)
2.リコグニション(顧客認知力)
3.オペレーション(運営力)


この三要素が組み合わされば、お客様から愛されるサービスが生まれる。

という主張は、それはもう誰も疑う余地のない事実で、改めてこうして提示されて再認識という感じでした。

ただ、何と言うのでしょうか、私にはどうしても、全編を通じて「どう?凄いでしょ!」というトーンが感じられて、あまり読後感は良いものではありませんでした。リッツカールトンの高野社長の著書と並んで紹介されるものの(出版社が同じですからネ)、実際にはかなり品格が異なります。

文中で現場の臨場感を出すべく随所に紹介されているスタッフの方々とのやりとりの言葉遣いも決して上品とは言えず、「う〜ん...なんだかなぁ〜」という気がしました。

お客様と50:50の関係が素晴しいサービスを生み出す」という哲学には諸手をあげて賛成ですが、小泉(前)首相とブッシュ大統領の《権八》来店時に、大統領に対して自分がどんな風に飲み物のオーダーを取ったのかと、言い回しまで敢えて紹介するほどの内容ではないのでは?と感じました。

・・・英語と言えば、本書の中に英語について《七大用語さえ覚えておけば英語は怖くない》(144頁〜)とわざわざページを割いて英語での接客用語について紹介しているのですが、ウェイターの英語力を上げる為のシュミレーション練習の紹介でこう書かれています。

「May I have your name please? (お名前は何と言われますか)」
「Sir, would you like to something to drink? (飲み物は何を召し上がられますか)」
「How would you like to be cooked? (焼き方は、どうしますか)」


これ、英語をちょっと習った方ならば中学生でもわかると思いますが、おかしな英語なんですよね...。

最初の文章は、まぁpleaseの前にコンマが欲しいところですが、話し言葉ですし、気にしないようにしましょう。

二つ目の文章ですが、would you like to と来たら、もちろんtoの後は動詞の原型が来ないとイケナイので

A)Sir, would you like to have something to drink?
B)Sir, would you like something to drink?

となるべきところなのですよね。

更に三つ目が酷すぎ・・・。

これでは、ステーキじゃなくてお客様を焼くことになります。まるで『注文の多い料理店』のように...。

言うまでもないのですが、How would you like it to be cooked?としなくてはならないのです。


でも、人間誰でも聞き間違えなり、書き間違えはあります。

それがどうのこうの...というのではなくて、誰もそれを指摘してくれない、という所に何となく新川氏の人となりを垣間見たようなそんな気分になるのです。

ブログや書簡などではなく、こうして著作が書物として世に出るまでの間には非常に多くの人の手を経ているはずなのに...しかも私が手にしたのは初刷本ではなく第2刷の本で、出版後も御友達や従業員の誰も指摘してくれなかったのかしら...と疑問に思うのです。

本書の中に登場する外国人のメイトルディやアメリカでの同業者の御友達達、果てには国際線客室乗務員だったという奥様が何も指摘して下さらなかったのかな...?と。

サービス業に従事する以上は、少なくとも自分が提供するものに間違いが無いように万全を期すのは最低限のマナーだと思うのですが、著作がこのような感じだと、どんなに良いことが綴られていても心に響きません。

・・・何となく全編を通して感じる違和感、金メッキ感というのが、ちょっと私には馴染めませんでした。ゴメンなさい。

愛されるサービス愛されるサービス
新川 義弘

かんき出版 2006-03-07
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テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

Say Hello! あのこによろしく。
この本は、出会いと別れの本です。
この本は、おかあさんの本です。
この本は、赤ちゃんの本です。
この本は、家族の本です、ともだちの本です。
遊びの本です。眠りの本です。
生と死の本です。笑いの本です。愛の本です。


こう糸井重里さんがプロローグで書いていらっしゃいます。

ジャック・ラッセル・テリアのルーシーちゃんの出産から子供達の旅立ちまでの写真日記です。

『ほぼ日刊イトイ新聞』に連載されていたものに大幅加筆して書籍化されたものですが、著者のイワサキユキオさんのルーシーと子犬達へ注ぐ愛情がいっぱいに溢れた本で、是非とも手元に置いて何度でも眺めたい1冊です。

私自身も子犬を何匹も育てて来ましたが、そんな人間にとっては、この本の中に出てくる子犬達(ニコ、サンコ、ヨンコ)に自分の犬達の子犬時代を投影して思わず目じりが下がってしまうこと間違いなしです!

手のひらに収まりそうなコンパクトなサイズなのも嬉しい、持ち歩き自在の愛の詰まった書籍です。


Say Hello! あのこによろしく。Say Hello! あのこによろしく。
イワサキユキオ 糸井 重里

東京糸井重里事務所 2004-12-10
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テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間
ビジネス書籍を読んで泣けるなんて、初めての体験でした。

この2007年、東京にもオープンするザ・リッツ・カールトンホテルの日本支社長の高野登さんによるリッツ・カールトンのホスピタリティ・マインドについての1冊です。

・・・と言ってしまえばそれだけですが、ここに紹介されている事例のひとつひとつが胸にジーンと響くのです。サービス業に従事している人間ならば「嗚呼!そう!!こういうサービスを提供したい!感動を生み出したい!」と共鳴することしきりでしょう。

私などは、何回読んでも感情移入しすぎて、涙で文字が霞んでしまうのです...。

実際にリッツ・カールトンホテルで起きた事例だけでなく、この本にはかなり詳細にリッツカールトンホテルでの社内での様子が紹介されています。あの有名なクレドリッツカールトン・ベーシックも紹介されていて「ここまで公にして良いの?」と心配になるくらいにリッツカールトン哲学が詳しく紹介されています。

結局のところ、そのノウハウ的な部分以上にハートが何よりも肝心であり、スタッフ一人一人の資質こそがホテル経営の心臓部であるという自信があるからこそ、ここまで紹介出来るのでしょう。

サービスで重要なことは高く感性を共有すること(112頁)
技術は訓練できてもパーソナリティは教育できない(142頁)


ここからもサービス業においては、それを支える人材こそが人財であるということが読み取れます。

それにしてもこの本が秀逸だと思うのは、これだけの深い内容がとても自然に語られているということです。自慢ではなく自信に満ちていて、リッツカールトンの素晴しさの周知を計るということではなく、本当に御自分の仕事に誇りを持って取り組んでおられるのだ、ということが伝わってきて、まるでサービス業に従事する人達へのエールのように感じられます。

仕事で落ち込んだり躓いたりする度に手にとってページを繰ると、必ず初心に帰って元気が湧いてくる1冊です。


リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間
高野 登

かんき出版 2005-09-06
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頭医者留学記
いや〜〜!面白かった

今はこの本、入手困難なのでしょうね。
私が持っている文庫本は離任される方から頂いたもので「昭和63年6月15日第一刷発行」と書かれていますけれども、今でも日本で入手可能ならば、是非とも多くの方に読んで頂きたい1冊です。

もしも北杜夫の「どくとるまんぼう」シリーズがお好きな方でしたら、この『頭医者留学記』はストライクゾーンに直球という感じです。

筆者(精神科医の加賀乙彦先生)のパリ留学時代の経験をベースにしたフィクションなのですが、登場人物のモデルとなった実在の人物が何人も居るらしく、小説では絶対に醸し出せない妙なリアリティがあって、1957年から60年までの「パリの日本人社会」の様子を垣間見ることが出来ます。

何と言っても、船で渡航する人々も沢山居た時代なんですよね...。

一九五七年九月四日、記念すべき日だ。なんて言ったところで誰もそう思いはしないだろうが、おれにとっては一生忘れられぬ日、船に乗ってフランスへ出発した日である。いまどき、フランスへ行くなんて何でもありはしないけれども、敗戦後十二年目のその当時は、まだ外国旅行が珍しかった。

こんな書き出しで始まります。読みたくなるでしょう?

主人公の精神科医の古義医師(もちろんモデルは筆者)が良いんですよ。生物学者の「ゾウリムシ」、工学部の「教授」、仏文学者の「鉄秀」と「勉強」、外科医の「大橋」、法学者の「深町」、破天荒な画家の「ダルマ」、オンナ言葉を使う画家の「エカコ」、フルート奏者の「加山」、領事の息子の「校長」、菓子職人の「オカシヤ」...日本人の主要メンバーでもこれだけの個性揃い!

それに加えて、濃すぎる現地メンバーは、スペインからの留学生の「ダロルソ」、そのダロルソの美人妹の「ブランカ」、売春婦の「ベッツィ」などなど...。

このメンバー達が繰り広げるドラマは恋愛あり、別離あり、妊娠騒動あり、喧嘩あり、成功あり、失敗あり...息もつかぬスピードでドラマが展開して行きます。

1950年代から60年代にかけての、「パリの日本人」ってきっとこんな感じだったのでしょうね...。

ノスタルジックで、滑稽で、切なくて、暖かくて...。

主人公の古義医師の「おれ」視点で語られる物語は臨場感抜群で、一緒に自分が留学している気分になります。

あぁ、こんな風に日本人にとって海外がまだまだ遠くて新鮮な時代があったのだな...という感慨と、多分自分がこの時代に生まれていたら、こうして海外暮らしなんて出来る素質は無かっただろうな...と自分の凡人ぶりを改めて感じたのでした。

手放しで「面白い!」と賞賛したくなる『頭医者留学記』です!

頭医者留学記頭医者留学記
加賀 乙彦

講談社 1988-06
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若き数学者のアメリカ
う〜む、タイトル買いはしなかったと思いますね、私ならば…。

このエッセイのたまらない面白さが、『若き数学者のアメリカ』というタイトルからは予感することも出来ないのが残念なのですが、内容は秀逸です!!

1972年にミシガン大学の研究員として招かれた藤原センセイの、まさに「若き数学者」としてのアメリカ生活が綴られているのですが、海外在住者のエッセイにありがちな「コチラの国ではこういう習慣なんです」と言った、テンション高めで自慢が少々混ざった異文化紹介作品などでは決してなく、著者のアメリカ生活での内面の変化に注目しながら、そんな自分を少し離れて観察し、自虐的なユーモアを交えて綴られているので、嫌味ゼロ好感度120%の1冊です。

「急性愛国病」のエピソードには、クスリと笑ってしまいますし、「スラングやその類の言い回しは、外国人にとって、知っていれば良いだけで自分で使う必要がないということ」については、ウンウン頷いてしまいますし、「アメリカ中西部の都市ミシガンでは10月の声を聞いた途端に冬がやってきて、どんよりとした冬空に押しつぶされて鬱病の症状を来たしてしまった」プロセスには、同じく中西部のウィスコンシンで過ごした厳しい冬を思い出しました。

フロリダの陽光で徐々に元気を取り戻して、いよいよ新天地コロラドでの最初の授業のエピソードなどは、勢い良い展開にグイグイ惹き込まれ、所々に散りばめられた「ココロの声」にぷ〜ッと噴出しっぱなしでしたし、アパートで仲良くなった子供たちとのエピソードにはしんみり...。

そして、ぺトナム戦争の帰還兵が生徒として教室に座っていたというあたりには、時代の空気を感じましたし、凄惨な戦争の現場を経てきた人達の精神状態がどのようになるのかということも、筆者の体験を経て知りました。

また最終章のアメリカと日本の民族性についての考察はただもう天晴れ!といった感じです。

(一部引用)
 アメリカに滞在する日本人で、自分の日本性を除去することにより、アメリカに融け込もうとする、あるいは融け込んだつもりの者がかなりいるが、傍から見ると、大変に滑稽である。そうすることにより、表面的には融合して見えるが、真の意味で融け込んでいるとはとても思えない。なるほど、彼らは一見アメリカ的である。握手も上手に堂々と出来るし、レディーファーストも自然に身につけている。英語もうまいし、軽妙なユーモア、身のこなしや服装、態度も日本人的ではなくアメリカ人に似ている。しかし、私にはそういった人々が真にアメリカ的だとは思えない。彼らは単に意味のない平均値に近いというだけの言わば、「日本的でない日本人」にすぎない。アメリカ人にはなり切れず、日本性を失っただけの国籍喪失人間としか思えないのだ。こういった人々はAmericanizedというよりは、むしろCocacolonized (Cocacola + colonize)と呼ばれるべきなのであろう。とにかく、アメリカという集合体に、外部の何かが、自らの異質性を放棄することにより適合しようと試みると、絶対にうまくいかないのである。それはオーケストラに似ているかも知れない。ヴァイオリンもチェロも、ピアノ、フルートも、他のどの楽器とも違う自分自身の音色を持つからこそ全体として美しいハーモニーを作る。各楽器を同時に演奏したような音色の楽器を人工的に作り出しても、それはオーケストラに融合しえないのである。
 アメリカに融和するには、日本性を維持したまま、ただ気持を開いて彼らに接するのが近道である。
(322〜323頁)

本当に、拍手、拍手、拍手です。

今ほどアメリカ在住経験者が多くなかった時代のこと、20代後半でアメリカに渡った筆者が、ここまでしっかりと自分の基盤を揺るがせることなくアメリカ生活を送ったということは、驚きに値します。

『国家の品格』の屋台骨はこうして30年前には既に出来上がっていたのですね。


若き数学者のアメリカ若き数学者のアメリカ
藤原 正彦

新潮社 1981-06
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